親権はどうやって決まるの?

■親権者を決める方法

未成年の子どもがいる場合、離婚後の親権者を夫婦のどちらにするか決めなければ離婚はできません。なぜなら、現在の民法においては、婚姻期間中は共同親権であるものの、離婚後はどちらかの単独親権としなければならないためです。

 

そのため、離婚だけを行い、子の親権者の決定・指定は後で決めることはできません。夫婦間の合意で親権者を指定できないときは、協議離婚の届出ができないので、調停や審判、最終的には裁判で親権者を定めることになります。

 

なお、子どもが数人いる時は、それぞれの子どもについて親権を決めなければなりません。 その場合、夫と妻に分けることもできます。

 

■親権が決まる基準

子どもの親権については、まずは交渉や調停の場で、父親と母親で話し合うことになります。しかし、話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所が審判をすることになります。

 

家庭裁判所が審判をする基準は「子どもの幸せ」かという観点です。具体的には、個別具体的な事案によりますが、概ね以下の事情が考慮される傾向にあります。

 

・親の事情

 これまでの子育て実績

 健康状態

 経済的余裕があるか

 居住環境

 親類の援助を受けられるか

 面会交流に積極的か

 現在子どもと同居しているか

 子育てに充分な時間を充てられるか

 

・子ども側の事情

 子どもの意思

 子どもの年齢

 性別・兄弟姉妹の構成

 

■離婚後に親権は変えられる?

どうしても早く離婚をしたいからといって、後で話し合おうとおもって、とりあえず相手を親権者にして離婚届を出すことは避けるべきです。なぜなら、一度親権者を決定してしまうと、子どもの戸籍に記入されてしまうからです。

離婚後に親権者を変更するためには、家庭裁判所の審判が必要となり、簡単に変更することはできません。このことは、たとえ離婚協議書で「子どもが10歳になったら親権を変更する」と書いてあっても同様です。離婚後は、父母の意思だけで勝手に親権を変えられないのです。

 

伊藤建 弁護士、法務博士(専門職)、大阪大学大学院高等司法研究科非常勤講師、広島大学法科大学院客員准教授、関西大学法科大学院非常勤講師。内閣府、消費者庁を経て、琵琶湖大橋法律事務所開業後、資格試験プラットフォームを運営する株式会社BEXAを創業。日本海ガス株式会社入社を経て、法律事務所Zを創立。多数の一般民事事件に従事したほか、初の受任事件で無罪を獲得し、第14回季刊刑事弁護新人賞最優秀を受賞するなど、訴訟戦略に強みを持つ。中小企業・ベンチャー企業の一般企業法務のみならず、起業家弁護士として、DX改革や新規事業創出支援、ルールメイキングも得意とする。