薬剤師と離婚したい配偶者が有利に進める方法 収入差・親権・財産分与で不利にならないポイントを弁護士が解説

初めての離婚協議…相手が薬剤師などの専門性の高い職業である場合、「収入や専門性で不利になるのでは」と不安になる方もいらっしゃいます。「夫(妻)は薬剤師で収入も安定している。私が離婚を望んでいるのに、話し合いではいつも主導権を握られてしまう…」「子どもの親権も向こうが有利になりそうで怖い…」 そんな不安を抱えていませんか?

薬剤師は国家資格を持ち、社会的信用や経済的安定が高い職業です。そのため、離婚において「どうせ相手が有利」と感じてしまう方も多いのが実情です。しかし、離婚は“職業”ではなく“法的事実と証拠”によって判断されるものです。

この記事では、薬剤師と離婚を考えている方が「不利にならず、むしろ有利に進める」ための考え方や準備、注意点をわかりやすく解説します。

薬剤師と離婚する際に生じやすい誤解と3つの視点

①収入格差と財産分与で不利になるのでは?

薬剤師は一般的に高収入であり、相手方の収入が家計を支えている場合「こちらは専業主婦(主夫)だったから、何ももらえないのでは」と誤解されがちです。

財産分与は、結婚した時から婚姻関係が破綻した時までに増えた財産を夫婦で分けるというのが基本的なルールです。結婚した時点の財産と婚姻関係が破綻した時点の財産を比較して算出します。たとえ相手名義の預貯金や不動産であっても、結婚後に夫婦で築いた資産であれば、一方が専業主婦かどうかに関係なく、夫婦の共有財産として公平に分割します。

そのため、収入の多寡にかかわらず、法的には平等な権利があることを知っておきましょう。

②親権を取られそうで不安

薬剤師のような専門職で安定収入があると、親権でも有利になるのでは?と感じる方も多いですが、親権は「子の利益」が最優先です。

判断基準として重視されるのは以下のような要素です。

親の事情
 ・これまでの子育て実績
 ・健康状態
 ・経済的余裕があるか
 ・居住環境
 ・親類の援助を受けられるか
 ・面会交流に積極的か
 ・現在子どもと同居しているか
 ・子育てに充分な時間を充てられるか

子ども側の事情
 ・子どもの意思
 ・子どもの年齢
 ・性別・兄弟姉妹の構成

詳しくはこちらの記事でも解説しています。

③薬剤師の“立場”に圧倒されないためには?

医療関係者である薬剤師は、冷静で論理的な話し方をすることが多く、離婚の話し合いでも感情を抑えて淡々と主張してくるケースがあります。

その結果、「こちらの主張が伝わらず、話し合いがうまくいかない…」と感じることもあるかもしれません。

このような場合は、第三者(弁護士)を間に立てて交渉することが非常に有効です。感情的なぶつかり合いを避け、法的根拠に基づいた交渉が可能になります。

離婚を有利に進めるためのステップ

ステップ1:証拠や事実の整理と今後に向けた記録

離婚を見据えた場合、まずすべきことは証拠や事実の情報整理です。具体的には以下のような項目を整理すると良いです。

 ・相手の収入資料(源泉徴収票、給与明細)
 ・預貯金・投資・不動産などの資産情報
 ・育児や家事の分担がわかる記録(スケジュール表、写真など)
 ・モラハラや不貞行為などの証拠があれば保管

特に相手が経済的に優位な立場である場合、財産の隠匿や口頭でのごまかしが起きるリスクがあります。証拠を押さえておくことが、自分の立場を守る第一歩です。

ステップ2:子どもの生活環境を整える

親権を希望する場合は、現在の生活がどれだけ安定しているかが大きなポイントになります。

 ・保育園・学校・友人関係が変わらないようにする
 ・実家の支援が得られるか、育児の協力体制が整っているか
 ・生活基盤を崩さず、子どもにとって安心な環境を用意することが重要です。

ステップ3:相手と直接交渉せず、弁護士に依頼する

感情的な対立や、相手からの高圧的な態度に疲弊する前に、離婚に強い弁護士への相談を検討しましょう。以下は弁護士に相談するメリットの一例です。

 ・相手とのやり取りをすべて弁護士経由にできる
 ・書面での交渉により、証拠が残る
 ・万が一調停・訴訟に進展しても、スムーズに対応可能

よくある質問(Q&A)

Q. 薬剤師の収入が高いと、慰謝料や養育費でも有利になりますか?
A. 慰謝料は「離婚原因」があったかどうかで判断されるため、収入の多寡は直接的に関係しません。
養育費については相手の収入が多ければ、その分高額になる可能性はあります(算定表に基づいて決定)。

Q. 相手が多忙で育児に関わってこなかったのですが、それでも親権を取られることはありますか?
A. 育児への関与度は親権の判断材料の一つです。日常的な育児を担っていた実績があれば、親権を得られる可能性は十分にあります。

Q. 相手が薬剤師で立場が強く、話し合いになりません。どうすればいいですか?
A. そのような場合は弁護士を通じて、冷静かつ対等な立場で交渉するのがベストです。一人で抱え込むより、早めの法的対応が有効です。

薬剤師との離婚は弁護士に相談を

薬剤師という安定した職業に就いている相手との離婚は、心理的にハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、法律は職業や立場ではなく、事実と証拠に基づいて公平に判断されます。離婚を不利にしないためには、感情だけでなく、法的な準備・交渉がカギになります。一人で悩まず、必要に応じて専門の弁護士に相談することで、有利な状況を作ることができます。

弁護士に相談する際は、多くの離婚事案を扱い、薬剤師との離婚についても知見と経験のある弁護士を選ぶと良いです。事務所のホームページなどを確認し、医療関係者の離婚事案の経験があるかどうかを確認しましょう。

法律事務所Zには、離婚問題の豊富な解決実績のある離婚弁護士が所属しており、医療関係者との離婚事案についても実績がございます。離婚を進める上で必要なアドバイスとサポートを提供いたしますので、あなたが受け取るべきお金について、適切な金額で受け取るために、当事務所に相談してください。

 

伊藤建 弁護士、法務博士(専門職)、大阪大学大学院高等司法研究科非常勤講師、広島大学法科大学院客員准教授、関西大学法科大学院非常勤講師。内閣府、消費者庁を経て、琵琶湖大橋法律事務所開業後、資格試験プラットフォームを運営する株式会社BEXAを創業。日本海ガス株式会社入社を経て、法律事務所Zを創立。多数の一般民事事件に従事したほか、初の受任事件で無罪を獲得し、第14回季刊刑事弁護新人賞最優秀を受賞するなど、訴訟戦略に強みを持つ。中小企業・ベンチャー企業の一般企業法務のみならず、起業家弁護士として、DX改革や新規事業創出支援、ルールメイキングも得意とする。