公務員と離婚したいときに知っておくべきこと 不利にならないための3つの視点

夫(または妻)との離婚を真剣に考え始めたとき、「相手は公務員だから無理かもしれない」「収入も地位も向こうが上だし…」と不安になる方も多いでしょう。特に専業主婦(夫)であれば、「私なんかが勝てるわけがない」と感じてしまうこともあるかもしれません。

ですが、法的には立場の違いや収入差によってそのまま離婚協議が不利になるわけではありません。本記事では、公務員と離婚したいと考えている配偶者が、冷静かつ不利になることなく離婚を進めるための重要なポイントを解説します。

公務員との離婚で気をつけたい「特有の問題」とは?

公務員との離婚では、一般的な会社員との離婚にはない独特の注意点があります。見落とすと損をする可能性もあるため、早い段階で確認しておくことが大切です。

・共済貯金・退職金の存在

公務員は「共済組合」に加入しており、給与天引きで貯金が積み立てられているケースが多くあります。これを共済貯金といい、通常の預貯金と同じく財産分与の対象になります。

また、退職金も一般企業に比べて手厚く、将来支給予定の退職金であっても、婚姻期間中に相当する部分は分与の対象です。

・年金分割の制度

国家・地方公務員は以前「共済年金」に加入していましたが、現在は厚生年金に統合されています。婚姻中に相手が納めた年金保険料の一部を年金分割という形で請求できる場合があります。

・信用失墜と懲戒のリスク

公務員である相手方にとって、離婚をすることで職場で不都合になることはあるでしょうか。

まず、離婚自体が懲戒処分の対象になることはありません。しかし、離婚の原因が不倫やDVなどの問題行動の場合、懲戒処分の理由になることはありえます。

例えば、国家公務員には信用行為を失墜する行為をしてはならないと定められており(国家公務員法99条)、不倫が信用失墜行為として懲戒処分の理由になった裁判例があります。「信用失墜行為の禁止」が法律で定められており、不倫やDVなどが職場に知られた場合、懲戒処分(減給・停職など)の対象になる可能性があります。

つまりこれは、離婚交渉での切り札になり得る場合もあると言えます。

収入格差があっても「財産分与は原則1/2」

「相手は公務員で安定収入、自分は専業主婦。財産はほとんどもらえないのでは…」と考える方は少なくありません。

しかし、財産分与は夫婦が婚姻中に協力して築いた共有財産を公平に分ける制度です。たとえ専業主婦であっても、家事・育児・内助の功は「財産形成への貢献」と見なされ、基本的には2分の1ずつ分け合うのが原則です。

たとえば、以下のような財産が対象になります。

・給与口座の預貯金(名義がどちらでも)

・公務員共済組合の共済貯金・退職金見込額(婚姻期間に相当する部分)

・不動産や自家用車 – 株や投資信託 など

※退職金は「将来の支給分」であっても、婚姻期間に相当する分は分与の対象になります。

親権は「子の利益」が最優先 職業の有利・不利は基本的にない

「公務員だから安定している」「自分は無職だから親権は取れないのでは…」と思うかもしれませんが、親権は“どちらが子どもにとって最善か”という視点で判断されます

家庭裁判所が親権を判断する主な基準には、以下のような要素があります。

・子どもの年齢・性別・性格

・ 現在の監護状況(主にどちらが日常的に育てているか)

・ 兄弟姉妹と一緒に生活できるか

・精神的・経済的・時間的に育児環境が安定しているか

・子どもの意思(ある程度の年齢の場合)

つまり、公務員だからといって有利になることもなければ、専業主婦だからといって不利になるわけでもありません。現実にどれだけ子どもの生活に関わってきたかが重視されます。

相手と直接交渉せず、弁護士に相談した方が冷静に進められる

離婚問題は感情が絡みやすく、当事者同士だけで交渉を進めると話し合いが平行線になったり、相手に言いくるめられてしまうケースがよくあります。

特に相手が公務員で「口が立つ」「冷静に見えて実は高圧的」といったタイプである場合、あなたが気づかないうちに不利な条件で話がまとまってしまうリスクがあります。

早期に弁護士に相談・依頼することで、以下のようなメリットがあります。

・法的に妥当な条件かどうかを冷静に判断してもらえる

・財産分与や養育費の金額を客観的に算出してもらえる

・相手と直接やり取りせずに済むので精神的負担が軽くなる

・必要に応じて調停や訴訟にも対応してもらえる

離婚は「交渉」でもあり、「法的手続き」でもあります。専門家のサポートを受けることで、あなたの立場や権利をしっかり守ることができるのです。

立場に関係なく「公平な離婚」は実現できる

相手が公務員であっても、あなたが専業主婦(夫)であっても、日本の法律は「立場の弱い人を切り捨てるもの」ではありません。

・財産は1/2ずつが原則

・親権は「子どもの利益」重視

・弁護士を通じて冷静に進める

これらの原則を押さえ、早めに信頼できる弁護士に相談することで、あなた自身とお子さんの将来を守ることができます。

法律事務所Zでは、公務員との離婚に詳しい弁護士が在籍し、共済制度や年金分割、退職金の扱い、親権交渉まで一貫してサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

伊藤建 弁護士、法務博士(専門職)、大阪大学大学院高等司法研究科非常勤講師、広島大学法科大学院客員准教授、関西大学法科大学院非常勤講師。内閣府、消費者庁を経て、琵琶湖大橋法律事務所開業後、資格試験プラットフォームを運営する株式会社BEXAを創業。日本海ガス株式会社入社を経て、法律事務所Zを創立。多数の一般民事事件に従事したほか、初の受任事件で無罪を獲得し、第14回季刊刑事弁護新人賞最優秀を受賞するなど、訴訟戦略に強みを持つ。中小企業・ベンチャー企業の一般企業法務のみならず、起業家弁護士として、DX改革や新規事業創出支援、ルールメイキングも得意とする。