裁判離婚とは?特徴や手順を弁護士が解説

離婚の進め方において、夫婦間の話し合いによる協議離婚、家庭裁判所による調停離婚でも離婚が成立しない場合に離婚を求める側が、家庭裁判所に離婚訴訟を起こし、判決にて離婚する方法を裁判離婚と言います。今回は裁判離婚について解説します。

 

■裁判離婚の特徴

訴訟を起こす側は原告、起こされる側は被告と呼ばれます。

協議離婚や調停離婚と大きく異なる特徴として、当事者双方の合意がなくとも離婚を成立させられる点が挙げられます。当事者のどちらか一方が離婚に合意しなくても、裁判で離婚を認める判決となれば、法的強制力によって離婚することができます。

 

裁判離婚は、協議離婚、調停離婚と異なり裁判を行うため、法律の専門知識や技術が必要です。裁判離婚を行うのであれば、初期段階から弁護士に依頼することをお勧めいたします。

 

裁判離婚には裁判費用などの金銭的負担の他に、時間や労力、精神的負担の覚悟も必要です。加えて、必ずしも望み通りの判決が出るとは限らないという点も覚悟しておくべきでしょう。裁判期間は早くて1年〜1年半、最高裁判所まで争うことになれば3~5年程度かかることもあります。

 

■裁判離婚の条件

裁判離婚はどのような場合においても訴訟を起こせるというわけではなく、以下に記す法定離婚事由に、ひとつ以上該当しなければなりません。

 

離婚事由は、現在は、次の5つの離婚原因に分類されていますが、2024年5月に成立した民法改正により、④については削除予定です。

 

①不貞行為

自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性交渉を行った場合です(いわゆる浮気や不倫の行為)。性交渉が一時的なものか継続しているか、愛情が有るか無いかは関係ありません。

 

②悪意の遺棄

同居・協力・扶助(ふじょ)といった夫婦間の義務を、正当な理由なく、履行しない場合(ギャンブルに興じて働かない、勝手に家を出てしまったなど)です。

 

③3年以上の生死不明

3年以上にわたり配偶者からの連絡が途絶え、生死不明な場合です。なお、生死不明が7年以上に及ぶ場合(災害など特別の危難があった場合は1年)には、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることが出来ます。確定すると配偶者は死亡したものとみなされて離婚が成立します。

 

④回復の見込みがない強度の精神病

精神障害の症状が、婚姻の本質ともいうべき夫婦の相互協力義務を十分に果たすことのできない程度に達している場合です。

 

ただし、配偶者が精神病になったという理由だけでは認められず、医師の診断やそれまでの介護や看護の状況、離婚後の配偶者の治療や生活などを含んで裁判官が判断します。

※上記のとおり、削除予定です。同事情がある場合には、後述の⑤を主張することになります。

 

⑤その他の婚姻を継続しがたい重大な事由

社会通念からみて配偶者に婚姻生活の継続を強いることが適切ではないと言わざるを得ないほど婚姻関係が破壊された場合です。①から④は、⑤の例示であり、本来的には⑤が認められなければ、離婚は認められない、という見解もあります。

 

婚姻を継続しがたい重大な事由は、性格の不一致、夫婦双方の意思、言動、信頼関係の破壊の程度、交流の有無、同居の義務、子どもの年齢、子どもの意思などの事情から、裁判所が判断します。

 

一例として、配偶者の親族とのトラブル、多額の借金、宗教活動にのめり込む、暴力(DV)、ギャンブルや浪費癖、性交渉の拒否、犯罪による長期懲役などがあります。

 

■裁判離婚の手順

裁判離婚を行うためには、離婚を求める内容と離婚の理由を書いた訴状や戸籍謄本、調停不成立証明書等の必要な書類を整え、夫または妻の住所地を管轄とする家庭裁判所に提出する必要があります。

 

裁判離婚を行うに際して、必要となる書類は様々ですし、訴状の作成には、法律知識が必要不可欠です。裁判離婚を行う際には、専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。

 

■裁判離婚の注意点

裁判離婚では原則として、離婚原因を作った有責配偶者から離婚訴訟を行うことはできません。例えば浮気相手と結婚したいがために、浮気をした側が配偶者に対して、離婚を請求することはできません。

 

しかし、最近では下記のような一定の条件を満たすときは有責配偶者からの訴訟を認めるケースもあります。

 

・別居期間が同居期間と比較し、相当長い

・未成熟(親から独立して生計を営むことができない)の子どもがいない

・離婚請求された相手方が精神的、社会的、経済的に過酷な状態におかれていない

 

ただし、条件を満たしていても有責配偶者からの提訴が全て認められる訳ではありません。有責配偶者からの訴訟が認められるようになった理由は、婚姻観・離婚観が時代によって変化する中で、事実上結婚生活が破綻し、修復が困難な状態で、婚姻を継続する必要がないと認められる夫婦を、いつまでも婚姻させ続けることが適切なのかということが考えられるようになったからです。

 

■裁判離婚は弁護士に相談を

裁判を行う裁判離婚においては、法律の専門知識や技術が必要となるため弁護士に依頼することをお勧めいたします。

 

弁護士に相談する際は多くの離婚事案を扱い、知見と経験のある弁護士を選ぶとよいです。事務所のホームページなどを確認し、離婚事案の経験があるかどうかを確認しましょう。法律事務所Zには、離婚事案の経験のある弁護士が多数所属しておりますので、お気軽にご相談ください。