婚姻費用は専業主婦でももらえる?算定方法や相場を弁護士が解説

離婚を進めるにあたって、財産分与や慰謝料、養育費などお金にまつわる条件は面は有利に進めたいものです。中でも婚姻費用は、夫婦が互いに社会的な生活を維持するために重要なお金と言えます。今回は婚姻費用について解説いたします。

 

■婚姻費用とは

「婚姻費用」とは夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用のことで、居住費や生活費、子供がいれば学費なども含まれます。夫婦は、収入等に応じて婚姻費用をお互いに分担することが民法760条で定められています。

 

このことは離婚を前提として別居中であっても同一で、たとえ一方に収入がなかったとしても、同居しているときと同程度の生活水準が互いに維持されなければなりません。

 

■婚姻費用の算定方法

では、婚姻費用の額はどのように算出するのでしょうか。一般的には「算定表」という早見表を用いて算定されます。この算定表を見れば、婚姻費用を支払う方(義務者)と受け取る方(権利者)の収入の組み合わせから、迅速におおよその額を算定することができます。収入の組み合わせですので、給与所得者であれば源泉徴収票、自営業者であれば確定申告書などの客観的資料からそれぞれ認定するのが通常です。

 

自営業を営む方の場合、課税対策によって確定申告書上の収入が、実際の収入に比して著しく低くなっていることがしばしばあります。

 

客観的な資料から正確な収入額を認定することが難しい場合には、生活実態を考慮に入れて婚姻費用を算定する方法があります。例えば、お小遣いなど毎月定額で捻出している生活費をもとに収入を逆算します。

 

■婚姻費用の相場は?

婚姻費用の相場はいくらくらいでしょうか。上述の算定表に照らし合わせることで、おおよその婚姻費用を算定できます。

 

例えば、義務者の総収入が800万円、権利者の総収入が500万円で、14歳未満の子が1人いる場合、6~8万円が婚姻費用の相場となります。

 

これに加えて、子供が病気で高額の治療費がかかるなど、家庭の実情に応じて算定表の相場から金額の増減がなされます。

 

■専業主婦でも婚姻費用はもらえる?

婚姻費用に関してよく聞かれききいるのが、「専業主婦でももらえる?」という質問です。離婚に向けて別居をするにあたり、生活費を捻出できるか不安になる方も多いでしょう。結論から申しますと、専業主婦でも婚姻費用をもらうことができます。

 

これは別居する場合も同一で、専業主婦で収入がなかったとしても、同居しているときと同程度の生活水準が互いに維持されなければならないという「生活保持義務」に基づいています。

 

では実際に婚姻費用を算出するにあたっては、働いていない方の年収はゼロとして算出するのでしょうか。収入がなかったとしても、潜在的に働く能力があるかどうかが考慮されることになります。専業主婦であっても、心身ともに健康で乳幼児の育児をしなければならないなどの事情で働けないという状況でなければ、パートタイマー程度の年収を基準にして算出するケースが多いです。その場合、年収をゼロとして算出した場合よりも、婚姻費用の金額は下がることになります。

 

■離婚に強い弁護士に相談を

このように、婚姻費用の算出にあたっては、単純な収入だけでなく様々な事情を考慮して計算していきます。ご自身では判断が難しいこともあるかと思いますので、弁護士に相談することをお勧めします。

 

弁護士に相談する際は、多くの離婚事案を扱い、知見と経験のある弁護士を選ぶと良いです。事務所のホームページなどを確認し、離婚事案の経験があるかどうかを確認しましょう。

 

法律事務所Zには、離婚問題の豊富な解決実績のある離婚弁護士が所属しており、離婚を進める上で必要なアドバイスとサポートを提供いたします。あなたが受け取るべきお金について、適切な金額で受け取るために、当事務所に相談してください。

 

伊藤建 弁護士、法務博士(専門職)、大阪大学大学院高等司法研究科非常勤講師、広島大学法科大学院客員准教授、関西大学法科大学院非常勤講師。内閣府、消費者庁を経て、琵琶湖大橋法律事務所開業後、資格試験プラットフォームを運営する株式会社BEXAを創業。日本海ガス株式会社入社を経て、法律事務所Zを創立。多数の一般民事事件に従事したほか、初の受任事件で無罪を獲得し、第14回季刊刑事弁護新人賞最優秀を受賞するなど、訴訟戦略に強みを持つ。中小企業・ベンチャー企業の一般企業法務のみならず、起業家弁護士として、DX改革や新規事業創出支援、ルールメイキングも得意とする。